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「個別指導で医師の人権侵害阻止」、埼玉の開業医 - 津曲

2017/08/18 (Fri) 09:14:21

https://www.m3.com/news/iryoishin/551107
「個別指導で医師の人権侵害阻止」、埼玉の開業医
地方厚生局から画期的回答「カルテに基づく質問は認められず」


レポート 2017年8月16日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

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 山崎外科泌尿器科診療所(さいたま市浦和区)院長で、埼玉県保険医協会常任理事の山崎利彦氏はこのほど、4年の長きにわたる個別指導を経て、二つの画期的な回答を関東信越厚生局から文書で引き出すことができた。一つは、個別指導は、行政手続法の適用を受けること。もう一つは、カルテなどを見てその内容について質問する「質問検査権」が地方厚生局に認められているのは監査の場合であって、個別指導では認められていないということだ。

 山崎氏への個別指導の第1回は2013年3月。第5回は2017年3月で、関東信越厚生局が、カルテとレセプト内容を突合して質問する場面はなく、レセプト請求の方法などについて一般的なやり取りをする「面談懇談形式」で終了、指導の結果は「おおむね妥当」で、診療報酬の返還などは伴わなかった。

 山崎氏は、「関東信越厚生局から、個別指導において『健康保険法に定めのない事項については、行政手続法が適用されるものと考える』との回答を文書で得た。全国保険医団体連合会をはじめ、全国の保険医が長年主張してきたことであり、厚生局が文書で回答したのは初めてのこと」とその意義を説明。



左から、小橋一成氏、山崎利彦氏、青山邦夫氏。

 個別指導は、レセプトで高点数が続いた場合やレセプト請求に問題があると想定される場合などに、地方厚生局が医療機関に対して実施する。ただし、健康保険法73条には「厚生労働大臣の指導を受けなければならない」とあるだけで、その詳細は「指導大綱」に基づき実施されるが、時に同大綱を逸脱したり、地方厚生局の高圧的な態度を機に、開業医が自殺を図るなど、「行きすぎた行政指導」が問題視されることがこれまで度々あった(『保険医の人権を守れ!指導大綱・監査要綱の改正案』などを参照)。

 1994年10月に施行された行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることが目的。地方厚生局の恣意性などを排除するため、同法に準拠した個別指導の実施や、「指導大綱」そのものの改正を求める声は依然から根強かった。その意味で山崎氏が関東信越厚生局から受け取った文書の意義は大きい。その内容は、以下の通り。


山崎氏が個別指導について関東信越厚生局から受け取った文書の抜粋

1.個別指導が行政手続法の適用を受ける点について
山崎氏の質問(抜粋):
 行政手続法と健康保険法との関係について、健康保険法第73条では、指導を受ける義務が規定されており、指導の日時・場所・指導内容については一定の裁量権があると思われるが、目的に照らし、合理的な範囲を逸脱してはならないことは明らかであり、また、これら以外について行政手続法の行政指導の条項が適用されるのは当然である。
関東信越厚生局の回答(2015年3月31日付):
 健康保険法に定めのない事項については行政手続法の適用がされるものと考えます。


2.地方厚生局が「質問調査権」を有しない点について
山崎氏の質問(抜粋):個別指導において、質問調査権があるのか否かを明確にしてもらいたい。
関東信越厚生局の回答(2017年2月28日付):
(1)個別指導は、健康保険法第73条に基づいて行うものであり、同法78条に規定されているような質問または調査権限(いわゆる質問検査権)は有していません。
(2)個別指導の実施方法は、保険医療機関等に課せられている厚生労働大臣の指導を受ける義務に基づき、関係書類を閲覧し、個別に面接懇談方式で実施するものであります。
(3)個別指導は、保険医療機関等および保険医等に課せられた義務である以上、指導において指導者の指示を被指導者が拒んだ場合には、個別指導を実施する権限を有する厚生労働大臣が、これを拒否していると判断することがあります。

 山崎氏の支援を続けてきた埼玉県保険医協会の副理事長を務める小橋一成氏は、今回の成果を「徹底して法律に則った個別指導を求めた結果。従来の個別指導では『監査的指導』が見られたが、面談懇談方式が今後徹底されれば、人権を侵害するような個別指導は一掃されるだろう」と評価。

 「山崎氏のケース、特殊」

 ただし、小橋氏は「今回は特殊な事例」と断る。「特殊」とは、山崎氏自身が法的根拠に基づく個別指導を受けるという強い意思を持って理論武装し、日常診療でもカルテ記載やレセプト請求に留意し、「個別指導の拒否」に当たらないよう、弁護士と相談しながら、慎重かつ丁寧な態度で関東信越局とやり取りを重ねたという意味だ。「個別指導の拒否」と判断された場合には、「監査」に移行する場合があり得る。「常に、『必要に応じて協力する』という姿勢で対応することが必要」(小橋氏)。

 山崎氏も、「私が求めたのは、カルテ閲覧の拒否ではなく、あくまで行政手続法に基づいた個別指導を行うこと」と念を押す。「面談している中で、カルテを見てもらった方がいいと私が思う場面があれば、いくらでも見てもらう。例えば、『外来管理加算を算定する際に、どのような内容をカルテに書いているか』と聞かれた時に、一般論ではなく、実際のカルテを見てもらい、その内容が妥当か否かを確認してもらった方が私としても安心」(山崎氏)。

 埼玉県保険医協会副理事長の青山邦夫氏は、「誤解してもらいたくないのは、法的に則り、保険診療のルールについて面接懇談する個別指導を実施すべきというのが、我々の基本的スタンスであるということ」と念を押す。「医学的、かつ保険診療のルールを踏まえた、きちんとした個別指導を実施するには、指導医療官の質も問われる。我々協会にはその資質を備えた医師がおり、指導医療官として採用してもらうよう、関東信越厚生局に申し出ている」(青山氏)。

 集団的個別指導の根拠も示されず

 山崎氏の4年にわたる個別指導は、次のような経過をたどった。まず2011年度に「集団的個別指導」の対象に選定された際、その根拠について示すよう求めたが、回答がなかったために、「集団的個別指導」を欠席。それが理由で、2013年3月に第1回の個別指導を受けた。

 第1回の個別指導において、山崎氏は弁護士の帯同のもと、録音と録画まで行った。そこで、興味深いやり取りが展開された。

 一般的な個別指導は、医療機関が直前に指定された患者数人分のカルテを持参し、個別指導の場で地方厚生局に提示。レセプト請求との齟齬等を指摘され、問題があれば診療報酬の返還を求められる。同様の問題があるか否かを、それ以外のレセプトとカルテについて各医療機関が自主的に調査、その結果として「自主返還」を求められることが多い。

 これに対し、山崎氏は、個別指導の法的根拠を確認し、カルテの提示は、健康保険法や指導大綱には記載されていない上、行政手続法は「任意の協力」により指導が成り立つとしていることから、関東信越厚生局に「カルテ閲覧」の根拠を質したが、同局に加え、埼玉県の国保医療課や立会人からも回答はなかった。「『カルテが提示されないのなら、指導の意味がないので、監査に移行する』などの誤った説明があったが、カルテを提示することなく、診療内容についての一般的なやり取りで終了した。指摘事項も1点だけだった」(山崎氏)。事務官から「本日の指導は、終了した」と告げられた。

 ところが指導の結果通知を待っていたところ、約3カ月後に個別指導の「終了」が撤回され、「中断」扱いに変わった。「カルテを閲覧していなかった」のがその理由だった。第2回の個別指導の再開通知が来たのは2014年3月。第3回が2014年9月、第4回が2016年11月、第5回が2017年3月3日だった。これらの個別指導に加えて、関東信越厚生局との文書による質問と回答というやり取りを続け、結果的に二つの画期的な回答を受け取った。

 カルテ、「持参物の確認」にとどまり、内容は見ず

 第5回の個別指導において、山崎氏はカルテを持参したものの、法律に則った形での個別指導を関東信越厚生局に求めた。「持参物の確認」という範囲でのカルテ閲覧にとどまり、関東信越厚生局がレセプトと突合することはなかった。「保険診療についての理解を深めるやり取りであり、医学的な内容も含めて、本当に有意義な指導を受けることができた」(山崎氏)。以下のやり取りで個別指導は終了、その結果は3月29日に通知された。

 山崎氏らは今後、今回の二つの回答について、医療者に広く周知していくとともに、個別指導の「中断」については健康保険法や通知等には規定がないことから、ルール作りを呼びかけていく方針。「私の個別指導においても、中断のルールがいまだ曖昧。その明確化を求めていくことが今後の課題」(山崎氏)。さらに指導大綱や監査要綱について、改正の対案も検討していく予定だという。


◆山崎外科泌尿器科診療所への2017年3月の個別指導の内容(山崎氏による)

・関東信越厚生局は、カルテの閲覧は、持参物の確認として、持参資料に不足はないかという観点で閲覧した。
・対象患者のカルテとレセプトの突き合わせをするのではなく、指導大綱で規定している「面談懇談方式」が実施された。
・関東信越厚生局側は、レセプトに基づいて診療内容、検査の実施方法・頻度、電子カルテの記述方法など一般的な質問をし、山崎氏が回答。山崎氏からも疑問点を技官に質問し、意見を聞くなどのやり取りが行われた。
・対象患者30件全てに実施、予定時間の2時間ちょうどで個別指導は終了。
・指導日から1カ月経たないうちに、結果通知が送付された。結果は、4年前の第1回個別指導の時と同様、1点の指摘事項を受けたのみで、「おおむね妥当」だった。

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